もうすぐ選挙の夏がやってくる

政府は、参議院選挙の投開票日を令和7年7月20日に決定した
物価高対策や消費税減税が争点となる今回の選挙

NHKの最新世論調査によると、自民党の支持率は27%と、前回調査より4.6ポイント数字を落とした
内閣支持率もマイナス5ポイントの34%と低調だ

だが、この結果が確実に反映されるとは限らないのが選挙の恐ろしいところである
投票日の20日は3連休の中日に当たる

組織票の多い自民党や公明党が、投票率を下げて自分達が有利になるよう画策したのではと憶測を呼んでいる
もっともこの手段、期日前投票ができるようになった現在ではあまり効果はない
それよりもっと小賢しい選挙対策を政府は仕掛けてきた
それは小泉進次郎氏を農林水産大臣に任命したことだ

それまでビクともしなかったコメの値段が彼の就任後下落し始め、備蓄米も流通しだした
オールドメディアも連日小泉大臣の「手柄」を報道
農業の救世主として持ち上げられ、その言動は注目され続けている
JAや米卸売業者といったわかりやすい「敵」に対抗し、何かやってくれるのではと期待させるこの手法
まさしくこれは20年前、彼の父・小泉純一郎が仕組んだ衆議院選挙のときとまったく同じやり口だ

2005(平成17年)8月、当時の小泉首相の悲願「郵政民営化関連法案」が参議院において否決された
これに反発した首相は、かねてより表明していた衆議院解散を決行
そして党内外の反対派を「抵抗勢力」と位置づけ、徹底的に排除して回った
権力とカネにまみれていた自民党政治にたてつく改革派とそれに抵抗する古い体質の悪徳議員

そんなわかりやすい図式が国民を熱狂させ、「小泉劇場」とまで呼ばれた
結果は自民党の圧勝に終わり、首相の目論見通り郵政民営化が断行されたのである
だが、このとき投じた一票の重さを、きちんと把握していた国民はどれほどいたのだろうか?
少ない給料から税金をむしり取られ、生活に必要なインフラの整備さえおざなりになっている今の日本
こうなった要因の一つが、あの民営化だったと今頃になって思い知らされているのだ
「郵政民営化」の最大の目的は経済の効率化とされていた
税金の無駄を削り、民に任せられるところは任せて、国の事業をスリム化するのが建前だった

しかし、この主張自体大きな嘘だったというのがのちに判明する
そもそも郵政事業に税金は投入されていなかったからだ

郵便局が郵政省の所管だった時代は郵便・銀行・保険の各事業は一体化されていた
郵便はもともと収益を生む事業ではない
だからこそ全国均等なサービスや雇用の維持に、ゆうちょやかんぽのバックアップが不可欠だったのだ
三位一体で黒字経営を維持していた郵政事業
そのアガリは、道路公団などの公共事業に使う財政投融資に回されていた

税金投入どころかむしろ国の財政を支える側だったのだ
それが民営化により分社化され、郵便事業は赤字経営を余儀なくされている
今年6月には650億円の公的資金投入を盛り込んだ郵政民営化法改正案が国会に提出された

国の財政再建が目的だったはずなのに、赤字補てんに税金を投入したのでは本末転倒もはなはだしい
郵政事業が国営のままなら、その利益を日本のインフラ整備に回せていた
水道管や道路の老朽化で人命が失われるのも、郵政民営化が発端といって過言ではない

実は、経済的損失は郵政だけでなく国鉄の民営化でも問題視されていた
1987年の分割民営化に伴い、7社に分割された国鉄

採算の取れるところと赤字路線を抱えるところの差は分社化によって広がり続けた
特にJR北海道や四国はいまだ国の補助がなければ成り立たない状態だ
郵政にしろ、国鉄にしろ、民営化は経済の効率化どころか毒にしかなっていない
加えて問題なのは、形ばかりの民営化が引き起こした日本郵政グループの不祥事だ
2025年6月5日

国土交通省は、日本郵便への貨物自動車運送事業の許可取り消しという異例の行政処分を明らかにした
配達員への点呼を適切に行わず、飲酒運転を見逃すなど法令違反が多数確認されたのが理由だ
全国3188の郵便局のうち75%(2391局)の点呼不備が発覚
約2500台のトラックやバンが5年間使用禁止が決定された
これによりゆうパックや郵便物の配送網に深刻な影響は避けられないと言われている
国民生活のインフラである郵便事業への信頼は揺らぐことになった
しかもこの不正は氷山の一角に過ぎない
日本郵政グループ内では郵政民営化以来、数々の事件が取りざたされている

2019年のかんぽ生命の約18万件の不適切契約
2025年3月のゆうちょ銀行によるのべ998万人分の顧客情報不正流用
そして度重なる飲酒運転発覚、と挙げればきりがない
これには日本郵政グループのいびつな体質が影響している
民間企業でありながら公共サービスを提供するという民でも官でもない中途半端な立ち位置
いまだにお役所根性が抜けない上層部が、下のものには民間企業ばりにノルマを押し付けた

成績を上げるためパワハラが横行するようになり、自◯や過労◯が多発している
そんな職場ではサービス向上の意識が高まるはずもなく、公共サービス機関としての責任感も育たない
結果、コンプライアンス意識の欠如した民間企業もどきができあがってしまったのだ
国の財政を圧迫し、サービス低下まで招いている民営化
デメリットばかりのこの政策を強行した背景について、実は一般国民はあまり知らされていない
ここにはアメリカの強い影響力が潜んでいたのである
1980年代以降、アメリカは「対日年次改革要望書」を通じ電電公社や郵政の民営化を要求してきた

2001年の小泉政権発足と同時期に、郵政民営化議論が加速
ゆうちょ・かんぽの350兆円資産がアフラックなどの外資の標的となってしまった
TPP交渉でも、アメリカはかんぽ生命の市場参入を求め、外資保険会社の販路拡大を後押した
SNSでも「日本のインフラは米国の植民地支配の一部」という批判が絶えない

国のため、国民のためと大騒ぎして押し通した郵政民営化の実態は、アメリカへの忖度だったわけだ
小泉首相や竹中平蔵郵政民営化担当大臣の発案でもなければ、努力のたまものでもない

ただただアメリカの用意した既定路線を進んだだけのことである
他国に国民の大切な財産を奪われ、必要なインフラにさえお金がかけられなくなった貧しい日本
郵政民営化がもたらしたのは「日本崩壊」のきっかけだったのである
さて、現代に立ち戻ってみよう
今回の選挙でもし自民党が大勝するようなことがあれば、小泉進次郎「総理大臣」が現実味を帯びる

彼が目指すのはJA(農業協同組合)を株式会社化し、穀物メジャー・カーギルに買収させることだ
採算の取れるJAバンク・JA共済と不採算部門の農業関連事業を分離

アメリカがおいしいところだけをいただく算段らしい
郵政と同様、赤字の部分は日本政府が手厚く保護するか、さらに別の外資に売り飛ばされるか
どちらにしても国民にとってトクな部分は一つも見当たらない
父・純一郎と同じように日本崩壊を加速させるだけである
さらに自民党が狙っているのはNTTの完全民営化だ

現在NTT法にある「外資比率は全体の3分の1」という規制が、アメリカのお気に召さないらしい
すでにユダヤ系のブラックロックなど外資が25%参入しているが、それでは到底足りないようだ
政府は保有している株を売り、NTT法自体廃止にしてしまう案を着々と進行させていた
しかも株売却益は防衛費に当てるとまで言い出す始末だ

だがそれに対して総務省の有識者会議がNTT株式の保有義務は維持すべきとの最終報告書を提出
外資や外国人議決権の規制に変更は加えられず、一部改正するだけでかろうじてNTT法は生き残った
だが付則に「3年をめどに「改廃を含め」検討する」という文言を盛り込むなど、引っ込める気はさらさらない
経済面でも防衛面でもどこまでもアメリカの顔色を伺っているのがよくわかる話だ
国家安全保障上、通信インフラに外資を入れる危険性をまったく考えていないこの提案
もはや国会議員は外資とアメリカ国家の都合のいいよう法律改正をする道具と成り果てたのである
生活に必要なインフラを破壊し、海外、特にアメリカへの利益供与を最優先事項とする自民党

意図的に作られたドラマティックな要素だけを報道し続け、与党に擦り寄るオールドメディア
そして雰囲気に流され自民党に票を入れ続けるか、もしくは投票自体を放棄をしてしまう日本国民
そろそろこんな不毛なループから抜け出すときが来たのではないだろうか
自国ファースト一本やりのトランプは迷惑千万だが、他国ファースト一点張りの日本政府よりマシかもしれない

それでもあなたは自民党を選びますか?
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